教授ご挨拶

真の産学官連携による低侵襲治療関連医療機器の研究開発

医療機器の研究開発には、現場で遭遇する課題(ニーズ)をわかりやすい形で抽出し発信できる「臨床医」、その課題を解決できる技術を有する「ものづくり企業」、さらには製品として世に送り出せる「販社」、他にも知的財産や薬機法の専門家等、多くのプレーヤーの密なる連携が必要です。新規開発のたびにチームを組んでいては大変能率が悪いし、ノウハウも蓄積しない。これらがうまく機能する持続的な「研究開発プラットフォーム」あるいは「研究開発複合体」のようなものが望まれていました。

我々は2008年、低侵襲診断・治療に必要となる革新的な医療機器の開発をめざし、大阪大学消化器外科内の研究グループ「ENGINE」として出発しました。ENGINEとは、Endeavour for Next Generation of INterventional Endoscopyの略で、「医療機器開発を通じて次世代の低侵襲治療分野を開拓していこう」という我々の強い意志を示したものです。当初は6社のみが参画する小さな産学連携プロジェクトでしたが、当時としては画期的であった「オープン・イノベーション」方式を採用し、数々の意欲的な医療機器の開発に挑戦。4年後の2012年には10社の参画を得て大阪大学「次世代内視鏡治療学」共同研究講座に成長しました。当講座はその後も参画企業、協力医師の数を増やしつつ、低侵襲治療、内視鏡手術分野にとどまらず、より幅広い医療機器の研究開発へ活動を展開。いまや世界的に見ても非常にユニークな「医療機器研究開発プラットフォーム」として、20を超える企業、50を超える学内外の臨床医が共同で機器開発に取り組む「実践の場」となっております。

当講座はこれまで20超の医療機器を世に送り出す等、大学主導の機器開発コンソーシアムとしては比類のない実績を挙げてきました。これらのなかには、全国の手術室や内視鏡室に広く普及しているヒット製品も複数含まれています。また、「研究成果を企業と共有する」という共同研究講座ならではの姿勢を貫いており、企業との共同出願も150件を超えております。さらに、大学に設置された講座の大切な使命として、医療機器開発を単なる「ものづくり」に終わらせることなく、「学問」の領域に高めるべく、各種の学術活動にも積極的に取り組んでおります。

われわれ「ENGINE」の活動に是非ご期待下さい。

特任教授 中島 清一

特任教授 中島 清一(なかじま きよかず)

Kiyokazu Nakajima, MD, PhD, FACS
Professor

大阪大学大学院医学系研究科 次世代内視鏡治療学共同研究講座(プロジェクトENGINE)

Department of Next Generation Endoscopic Intervention (Project ENGINE)
Osaka University Graduate School of Medicine, Osaka, Japan

大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 消化器外科学

Department of Surgery
Osaka University Graduate School of Medicine, Osaka, Japan

1992
大阪大学医学部医学科 卒業
1999
大阪大学大学院医学研究科外科系専攻 博士課程 修了(医学博士)
2001
米国Cornell大学 外科 主任研究員
2002
New York - Presbyterian病院 低侵襲手術センター インストラクター
2004
労働者健康福祉機構 大阪労災病院 外科 医長
2006
大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 消化器外科学 助教
2010
大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 消化器外科学 講師(学部内)
2012
大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 消化器外科学 講師
大阪大学大学院医学系研究科 次世代内視鏡治療学共同研究講座 特任教授
大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 消化器外科学 兼任教授
                    
現在に至る

所属学会

日本外科学会
認定医、専門医、指導医
日本消化器外科学会
評議員、専門医、指導医、消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会
評議員、技術認定医、医工学連携委員会アドバイザー
日本がん治療認定医機構
がん治療認定医
日本消化器病学会
専門医
米国外科学会(ACS)
正会員(FACS)
米国内視鏡外科学会(SAGES)
正会員
欧州内視鏡外科学会(EAES)
正会員、Technology Committee Member
アジア内視鏡外科学会(ELSA)
正会員、Asian Innovation Committee 副委員長
世界内視鏡機構(WEO)
Surgical Endoscopy Committee 委員
Innovations in Global Surgery
Advisory Board Member
Surgical Endoscopy
Editorial Board Member
Minimally Invasive Therapy & Allied Technologies
Editorial Board Member
他、日本胃癌学会、日本食道学会、日本大腸肛門病学会、日本臨床外科学会、日本消化器内視鏡学会、J-CASE(世話人、臨床研究計画評価委員)、単孔式内視鏡手術研究会(世話人)、LECS研究会(世話人)、近畿外科学会(評議員)、近畿内視鏡外科研究会(世話人)、日本医療機器学会、日本医師会認定産業医 等

専門領域

  • 1.消化器外科学
  • 2.低侵襲外科学
  • 3.消化管機能性疾患と消化管運動生理学
  • 4.炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)の臨床
  • 5.新規内視鏡治療法および関連治療機器の開発
  • 6.外科教育、特に効果的な内視鏡手術トレーニング法の開発
  • 7.医工融合領域における人材育成
  • 8.医療機器開発基盤(エコシステム)の整備
  • 9.ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
  •                    
  • 10. 医療機器の国際標準化と国際展開

業績(2024年8月31日現在)

学術論文
英文主著論文 48本(うち原著論文 21本) ・ 和文主著論文 64本 ・ 英文著書 7本
(編者 1冊、分担執筆 6篇) / 和文教科書 15本(監訳および編集)
学会発表
筆頭演者 358件(国内 245件、海外 113件)
知的財産
特許:出願総件数 160件・登録件数 61件(US:12件、CN:7件、EP:9件)
意匠:登録件数 20件
商標:登録件数 11件
受賞歴
2009年 米国DDW Crystal Award
2013年 MEDTEC Japan MEDTECイノベーション大賞
2013年 ものづくり日本大賞 特別賞
2014年 りそな中小企業振興財団中小企業優秀新技術・新製品賞 産学官連携特別賞
2014年 大阪大学総長表彰
2018年 日本内視鏡外科学会 大上賞
2019年 大阪大学第一外科同窓会(汲泉会)小澤賞
2020年 グッドデザイン賞「蛍光尿管カテーテル」
2021年 近畿経済産業局施策功労者感謝状
2022年 日本医療機器学会 著述賞
競争的資金獲得状況
経済産業省委託事業 13件・文部科学省科研費 3件・文部科学省補助金 1件・厚生労働省研究費 2件・厚生労働省補助金 4件・日本医療研究開発機構補助金5件
日本学術振興会交流事業 1件・中小企業庁補助金 5件・民間助成金 20件・海外助成金 2件